会社と戦わない、でも逃げない方法

―― 裁判でも泣き寝入りでもない「第三の選択肢」

労働トラブルに直面したとき、
「裁判を起こすか、我慢するか」
そんな二択しかないように感じてしまう人は少なくありません。

しかし実際には、その間に立つ選択肢があります。
それは、勝ち負けを決めることを目的としない、話し合いの制度です。

このページでは、
結果ではなく「区切りをつける過程」に意味を持つ、
その選択肢についてお話しします。

労働トラブルの主な解決手段を整理すると

労働トラブルの解決方法には、いくつかの手段があります。

それぞれに役割があり、向き・不向きがあります。

労働トラブル解決手段の比較図
※どれが良い悪いという話ではなく、目的や状況によって選択肢は異なります。

「とりあえず、"あっせん"をしてみる」という選択

労働相談を受けていると、
解決策の一つとして
「とりあえず、あっせんをしてみますか」
と提案することがあります。

あっせんは裁判と違い、無料で利用でき、時間もあまりかかりません。
その一方で、強制力はなく、相手方が
「話し合いの場に出てこない」
という選択をすることも認められています。

ですから私は、必ずこうお伝えします。

「それでも、やるだけやってみますか?」

相手方が出てこなければ、結果だけ見れば徒労に終わるかもしれません。
それでも、あっせんには取り組む意味があります。

書くことで、事実と感情を整理する

あっせんの申立をするには、
事実関係を整理し、
「あのとき何が起き、どう感じ、なぜそうなったのか」を
書面に落とし込む必要があります。

私が申立書の作成支援をするときは、
「何も知らない人が読んで、どう見えるか」
という観点でコメントを挟みつつ、
申立人の方にご自身で書いてもらうようにしています。

この「自分で書く」という作業が、実はとても大切です。

書き上げた後は、
お互いにぐったりと疲れてしまうこともあります。
けれど、不思議なことに、
多くの方が少しスッキリした表情をされています。

"あっせん"が残すものは「勝ち負け」ではありません

あっせんは、必ずしも和解や解決を保証する制度ではありません。
結果だけを見れば、何も変わらないように見えることもあります。

それでも私は、
この「区切りをつける過程」こそが大事なのではないか
と感じています。

出来事を振り返り、
感情と事実を分け、
自分の言葉で整理する。

その過程を経ることで、
「次に進むための活力」が生まれることがあるのです。

特定社労士が関わる意味

あっせんは、制度としては誰でも申立ができます。
だからこそ、
一人で抱え込まないことが大切です。

特定社労士は、
代わりに戦う存在でも、
答えを押しつける存在でもありません。

第三者の視点で整理し、
一緒に言葉を整え、
話し合いの準備をする。

それが、私たちにできる支援です。

「やるだけやってみる」という一歩

いつも最後に、私はこう言って締めくくります。

「相手方が出てくるかは、正直わかりませんけどね……」

それでも、
「やるだけやってみる」
その一歩を踏み出すことが、
自分への信頼につながることがあります。

会社と戦わない。
でも、逃げない。

その選択肢があることを、
知ってもらえたらと思います。